土地の保護とそこからの恩恵〜アフリカ

forests21stcentury01.jpg森林破壊や砂漠化の原因には、干ばつや異常気象といった自然現象もさることながら、過剰な農地開拓、森林伐採など、人為的な要因も多く指摘されています。たとえば、こちらの動画「Forests for 21st Century (Part 2)」で採り上げられているタンザニア北部のシニャンガ地方は、かつて、アカシアやミオンボといった木々で広く覆われていましたが、農地確保のための過剰な開墾などにより、1980年代には砂漠化してしまいました。この課題の解決に取り組んだのが、「HASHIプロジェクト」という土壌保護活動。この地に緑を取り戻すため、1980年代半ばから約20年にわたって継続的に取り組んだ結果、森林の再生に成功したのみならず、持続可能な経済基盤を地元コミュニティに確立できたそうです。では、どうやってこれらを実現したのでしょうか?

forests21stcentury02.jpg「HASHIプロジェクト」では、一連の活動に地元のコミュニティを巻き込み、住民参加型のアプローチを採りました。具体的には、ンギティリ(Ngitili)という現地の伝統的なノウハウを活用。雨季に土地を閉鎖し、樹木や草の自然再生を促すという土地マネジメントを実践しました。これにより、すっかり痩せていた土壌の力が徐々に回復し、森林がよみがえり、地元住民の生活に必要な薪や薬草、建設資材まで、この地でまかなえるようになったそうです。地元で長年培われてきた伝統や知恵が現代の課題解決に生かされ、地球環境と地元の人々の共存共栄が実現できた貴重な成功事例といえますね。

forests21stcentury03.jpgこのプロジェクトにかかわってきたEmmanuel MINJAさんは、この動画のインタビューの中で、プロジェクト開始当初を振り返り、「植樹こそが解決策だと考えていたが、それだけでは十分ではなかった。地元の人々を巻き込むことこそ必要だということを学んだ」と語っています。政府や支援機関の強力なリーダーシップとともに、地元コミュニティの積極的な関与があってこそ、持続可能な森林づくりが可能となるのでしょう。

執筆:松岡由希子

[関連サイト]
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)による「HASHIプロジェクト」の検証まとめ
(英語)国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が「HASHIプロジェクト」について検証し、レポートにまとめたものです。
http://maindb.unfccc.int/public/adaptation/adaptation_casestudy.pl?id_project=117

環境シンクタンク「World Resources Institute」による「HASHIプロジェクト」の
まとめ(英語)
地球環境に関する研究機関「World Resources Institute」が「HASHIプロジェクト」の取り組みについてまとめたものです。
http://www.wri.org/publication/content/8108