持続可能な森づくりPart1~イギリスの森林復興事例

森林は、私たち生物が生きるために必要な酸素や食料を与えてくれる貴重な存在。また、二酸化炭素や硫黄酸化物などの有害な気体を吸収する機能を持ち、地球全体の調和を保つうえでも欠かせないものです。しかし、この200年で、世界の原生林の50%以上が消失してしまいました。これ以上の森林破壊を食い止めるべきなのはもちろんのこと、破壊された森林を蘇らせるための行動が求められています。

英国森林委員会(UK Forestry Commission)は、一度失われた森林を復興させた成功事例として、英国北部での取り組みをこの動画にまとめました。取り組み当初は荒れ果てていたこの地に、元来有していた生物多様性を回復させるべく、徐々に多くの種類の樹木を植え、育てていった結果、50年間で6万5千ヘクタールもの森林を復興させたそうです。この取り組みの特徴は、森林の復興や環境保全を目指す一方で、地元の住民が持続可能な生活を送れるように配慮されてきた点。地元の主要産業として林業が確立され、多くの観光客が訪れる自然豊かな観光スポットとなったことで地元経済にも利益がもたらされています。森林と住民との共生が実現されているという面で、優れた事例といえますね。

アフリカ、南米のアマゾン、東南アジアの原生林など、地球の至るところで、いまも森林破壊は進んでいます。一度失った原生林を元の状態に戻すことはできません。だからこそ、まずはこれを守る努力が必要といえるでしょう。では、これを失ってしまったら最後、私たちには何もなす術がないのでしょうか。この事例でも示されているとおり、世界各地ではすでに森林を復興させるための取り組みが行われ、これにまつわる研究成果や経験・ノウハウが多く蓄積されています。ポイントは、「真に持続可能な森林をつくり、 守っていくこと」。具体的な方策としては、「この森林は本来、どうあるべきなのか?」という観点で未来図をきちんと描き、この実現に向けて計画的な行動を継続していく一方、現地で生活する人々が持続可能な経済活動を行えるような仕組みや基盤を構築することも不可欠。「真に持続可能な森林」 とは、森林と住民とが共に生き続ける場ともいえるでしょう。こちらの動画で、実際に森林が蘇っていく姿をご覧ください。

執筆:松岡由希子

[関連サイト]
●英国森林委員会(UK Forestry Commission)の公式ウェブサイト(英語)
英国森林委員会(UK Forestry Commission)の取り組みや最新のニュース、研究成果などが掲載されています。
http://www.forestry.gov.uk/