森里海連環~つながりの価値観を取り戻す

morisatoumi01.jpg日本はしばしば森林大国と言われますが、もう一つ忘れてはならないのが海に囲まれた日島国であるということ。広大な森と豊かな海の存在が、多くの生き物と私たちの生活を支えてきました。一見すると、この森と海の”つながり”というのは目に見えるものではありません。しかし、良く考えてみれば、森と海は’水’によってつながっています。降雨などによって溜まった水が森から流れ出し、川を介して海にたどり着いた水は、再び蒸発して雨や雪となり、森に戻っていきます。日本の里ではこうした営みが、古くから人間含む多くの生き物の恵みとなり循環してきたようです。

今回の映像では、こうした森林生態系と沿岸浅海海域の関連性に注目し、森と海、自然と人、そして人と人とのつながりを考える『森里山連環』についてご紹介します。お話を伺った、京都大学名誉教授の田中克氏は、私たちの暮らしが里から離れ河口側に集中したことによって物質文明を求めすぎたことによって、本来の森と海のつながりが断ち切られようとしていると言います。その代表的な例として、皆さんもご存じの通り、諫早湾の干拓事業が挙げられています。生物多様性の宝庫であり漁業生産の宝庫であった有明海が危機的状況にあるのは、私たち人間が森と海の”つながり”を断ち切ってしまったことに起因しているようです。こうした”つながり”の価値を見直すことによって、こうした有明海の再生への取り組みが今始まろうとしています。

morisatoumi03.jpg私たちは、日々の暮らしの中で、森や海の存在を当たり前のように思ってはいないでしょうか?しかし、この森と海の”つながり”があったからこそ、日本はこんなにも豊かな国へと成長することができたのではないでしょうか?こうした自然の恵みに感謝し、その価値を見直すことで、すべての生き物が持続的に暮らしていくための社会が築かれていくように思います。

執筆:大瀧陽子

【参考URL】

●田中克氏による講演’「森は海の恋人」と「森里山連環学」’
http://www.scn.tv/user/kazukohno/mori.html

●京都大学フィールド化学教育研究センターHP
http://www.fserc.kais.kyoto-u.ac.jp/