持続可能な土地利用を目指して〜ケニア

現在、世界中で20億人以上の人々が乾燥地域で生活しているといわれています。これらの地域では、厳しい気候のもと、牧草、食料、燃料、医薬品、建築資材といった資源が、現地の人々の生活を支えてきましたが、資源獲得のための過剰な競争や集約型農業への移行などに伴って、気候変動が起こり、自然の生態系に影響を及ぼしつつあります。これらの課題に対して、ケニア・ナイロビ北東部にある乾燥地域の村Garba Tulaでは、IUCN(国際自然保護連合)と「Wildlife Resource Advocacy Programme」が地元住民と提携し、持続可能な土地利用を推進しています。動画「Preserving life and land in Kenya」は、地元住民のインタビューを交えて、この取り組みについて紹介しています。

移動型牧畜は、Garba Tulaにおける主たる産業のひとつ。この伝統的な牧畜手法は、労働者を貧困させ、砂漠化を助長し、野生生物の減少を招いているという見方もありますが、IUCNの調査では、近代的な大規模農場よりも20%も生産性が高く、生物多様性を拡大させるといった環境面での利点も明らかになっています。そこで、このプロジェクトでは、政府や地方自治体などの行政と地元住民との対話を調整し、伝統的な牧畜を保護するための法整備を促すとともに、地元住民による天然資源の持続可能な利用を推進しています。具体的なプロジェクトとして、貴重な水資源を有効活用するための貯水に関する技術・手法の研究が進められているほか、エコツーリスト村の建設といった、地域振興につながる新たな機会の創出にも取り組んでいます。

これらのGarba Tulaの取り組みの特徴は、プロジェクトに地域住民を積極的に巻き込み、持続可能な土地利用に対する意識を地域全体で高める一方で、行政への働きかけによって、法制度面からの基盤づくりも行っている点。自然環境と地域住民との共存向けた、持続可能なモデルケースとして、世界各地の乾燥地域でも応用できそうです。

執筆:松岡由希子

[関連サイト]
「Garba Tula」プロジェクトに関するIUCN(国際自然保護連合)の公式ウェブページ(英語)IUCN(国際自然保護連合)による「Garba Tula」の取り組みについて紹介されています。

http://www.iucn.org/about/work/programmes/social_policy/sp_themes/sp_dfid/sp_dfid_drylands/