野生動物の危機~気候変動が生態系を変える:4

CLIMATE TRACKERS Part4.01.jpgWWFベルギーのシリーズ、Climate Trackerの第4弾です。今回は、トンボ、雪豹、ワモンアザラシが環境保護を訴えます。
ベルギーに生息するトンボは、酸性の泥炭湿田をテリトリーにしています。この湿田には、氷河期さえも乗り越えてきた希少植物があちこちに存在していて、トンボはその湿田の表面に卵を産みつけるので、土の果たす役割は重大です。しかし、気温が上昇して土質が変わり、人間が開墾したりしたため、トンボの住み家は以前と比較して80キロも北上しています。

CLIMATE TRACKERS Part4.02.jpg雪豹は、ヒマラヤ山脈から登場。自身の白い豹柄が高値で取引されるからというだけでなく、骨も薬剤として使われるなど、ハンターから命を狙われています。そんな雪豹がヒマラヤの高地から見た氷河の様子を教えてくれます。速いスピードで溶けだす氷河。すべて溶けてしまうと洪水が頻発、干ばつによる砂漠化、砂嵐が発生します。もしも、このまま何もしなければ、21世紀の終わりには中央アジアの河が干上がり、ヒマラヤの氷は消滅するということです。

CLIMATE TRACKERS Part4.03.jpg最後はワモンアザラシ。アザラシの中では最小で、べリング海と北極海に生息します。氷の層に巣を掘って子を産むのですが、その巣がたくさん広がる様子は見事です。穴を掘って出産するのは、冷たい雨やクマなどの外敵から子を守るためで、暖かくなり氷が溶けだす頃が離乳の時です。ところが温暖化で氷が早く溶けだしてしまい、まだ小さな赤ちゃんが水温の低い海に滑り落ち、命を落とします。氷河がなくなるとともに、ワモンアザラシも絶滅してしまうのです。

それぞれの生き物が「私たちには 限界です」と、見ている私たちをまっすぐに見つめて訴えかけてきます。どの生き物も美しい濁りのない瞳で、私たち人間が行動を起こすのを待っているようです。
執筆:小田原由花

【参考サイト】
●クライメイト・トラッカーのHP。さらに情報を得たい方はご覧ください。(英語)
http://www.climatetrackers.net/