サメの保護を推進するカリブ海の島人

中央アメリカの北東部、カリブ海に面したベリーズは、さんご礁と美しい海から「カリブ海の宝石」とも呼ばれ、世界中から多くの観光客が訪れる観光地です。周辺海域は生物多様性にも富んでいましたが、近年、近隣諸国の乱獲によって、サメやエイなど、多くの生物の個体数が減少しています。こちらでは、この課題に対して、周辺海域のサメ・エイの保護に取り組んでいるレイチェル・グラハム博士の取り組みをご紹介しましょう。
動画「Saving Sharks and Rays」では、グラハム博士が中心になって取り組んでいる、ベリーズ初の全国的なサメ保護活動について、詳しく採り上げています。この活動では、地域住民に、サメやエイの存在意義や価値を教育し、保護活動への理解と協力を促したり、海洋保護区域の管理下でサメが生息できるような整備を進めてきました。次第に、地元住民も保護活動に積極的に関与。誤って捕獲してしまったサメを保護し、海域に放流したり、密漁を監視するといった取り組みを行っています。
地元住民を巻き込み、海洋の自然と生物多様性の保護につなげるというグラハム博士の活動は高く評価され、2011年、優秀な草の根の自然保護活動を表彰するイギリスの「Whitley Award」を受賞しました。海洋の自然環境や生物多様性は陸地に比べて見えづらいため、その価値が見過ごされがちな面もありますが、科学的なアプローチから客観的に評価し、その内容を正しく伝えることで、地元住民の意識や行動に変化をもたらすことができることを、この事例は私たちに教えてくれています。

執筆:松岡由希子

[関連サイト]
Whitley Award公式ウェブページ(英語)
Whitley Awardの受賞プロジェクトとして、レイチェル・グラハム博士の取り組みが詳しく紹介されています。
http://www.whitleyaward.org/display.php?id=168