南アフリカの干ばつ危機

unep_mountain_drought01.jpg今回ご紹介するVTRは、国連環境計画(UNEP)と統合地域情報ネットワーク(IRIN)が”Gatering Storm”(「垂れこめる暗雲」)というタイトルで制作した8章からなるシリーズのうちの第6章です。シリーズでは、1000万人が暮らすアフリカが、気候変動によって直面している現状を伝えます。
第6章では、周囲を南アフリカ共和国に囲まれたレソト共和国のハツュ村で、農民たちが干ばつによって貧しい暮らしを強いられている姿が映し出されます。

unep_mountain_drought04.jpgレソトは、全土がドラケンスバーグ山脈の山中に位置するため、平地が一切なく、農耕地は段々畑になっています。人々は生きるためにメイズを作っていますが、木がほとんどないハツュに吹き荒れる強風が干ばつを長引かせるという状態が、もう何世紀にもわたって続いています。
ハツュ村に行くためには”God Help Me Pass”と呼ばれる険しい山道を通らなければなりません。レソトの山は雪が減り、近年では雨もあまり降りません。ハツュでは不作が当たり前になってしまっているのです。

unep_mountain_drought03.jpg生きるためにメイズ(トウモロコシ)を植えた男性、2週間経っても雨が降らず、収穫の見通しが立ちません。レソトでは、家族と離れ、隣接する南アフリカに出稼ぎに行く人が多くいます。
男性が助言を求めた村長は、「慢性的な食糧不足なので、たとえ穀物がたくさんとれたとしても、家族全員が食べられるほどではなく、生活は厳しくなるばかりだ」と言い、番組は終わります。
最近では、レソトというとエイズ感染率の高さを問題に取り上げるテレビ番組を見かけます。成人の4分の1がHIV感染者で、平均寿命は35歳と驚きの数字が並びます。事実、人口増加率は0.5%。世界銀行によると、1990年の人口が220万人なのに対し、2007年には200万人に激減しています。しかし、レソトの問題はHIVだけでなく、温暖化による気温の上昇で降水量が減り、食糧不足に陥ってしまっているところにもあるのだということを、このVTRでは知らせます。
緑の少ない茶色の大地、少ししかないダムの水、不自由なく暮らす私たちがレソトの人にできることはないのか、考えさせられます。

執筆:小田原由花

【関連サイト】
●外務省のレソトに関するHP
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/lesotho/data.html

●ウィキペディアのレソト王国に関するHP
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%BD%E3%83%88

●”Gathering Storm”のHP
http://www.unep.org/themes/climatechange/poznan/FLVs/movie1.swf