地中海の異変

iucn_climate_change_oceans_1.jpg気候変動対策や地球温暖化防止に関する国際的な議論では、陸上での環境問題が採りあげられることが多いですが、同時に、海洋が地球に果たしている役割を再認識し、気候変動が海洋に与えている影響へも目を向ける必要があります。動画「Climate Change and Oceans」では、イタリア・シチリア島周辺の地中海での環境変化について採りあげています。

iucn_climate_change_oceans02.jpg地球の7割以上を占める海洋は、生物の呼吸に必要な酸素を生み出し、大量の二酸化炭素を吸収するという、地球にとって不可欠な役割を担っています。また、多くの生物にとって、貴重な生息地でもあります。しかし、シチリア島近くの地中海での調査によって、近年、気候変動によって、海水温が上昇し、海酸性化が進行していることが明らかに…。産業革命前に比べて30%も酸性化しているそうです。このような海洋での環境変化は、海洋生物にも影響を与えています。たとえば、さんご礁は半分以上、死滅した地域があります。また、これまで熱帯地域にのみ生息していた魚や海洋生物が、その他の海域でも多く出現。シチリアの調査機関の分析によると、地中海に生息する魚の2割と、クラゲの半数が、熱帯地域からやってきた「外来種」とみられています。これらの生物が侵入し、従来の生態系のバランスがいったん崩れされてしまうと、これを元に戻すことは極めて困難。ゆえに、外来種を侵入させないことが唯一の手段なのです。

気候変動に対する国際的な取り組みについては、2008年12月、コペンハーゲンで開催された「第15回気候変動枠組条約締結国会議」以降も、継続的に議論されています。気候変動が影響を与えているのは、陸上だけでなく、海洋も同じ。持続可能な未来を次世代に届けるために、各国がともに協調し、実効性あるアクションを起こしていくことが望まれます。

執筆:松岡由希子

[関連サイト]
国際自然保護連合(IUCN)の公式ウェブサイト(英語)
IUCNが取り組む環境保護活動について紹介されています
http://www.iucn.org/