気象学者が語る~地球温暖化が「水」に与える影響

nwf_southeast_drought01.jpg今回ご紹介するのは、深刻な干ばつが水の供給に及ぼす影響をまとめた調査報告のドキュメンタリー番組です。制作は米国の環境保護団体、National Wildlife Federation(全米野生生物連盟、NWF)。番組では米国南西部地域で最近発生している大規模な干ばつの影響について、NWFの気象学者アマンダ・シュタウト(Amanda Staudt)博士が詳しく説明しています。

nwf_southeast_drought02.jpgこれによると、米国南東部地域では過去にも定期的に大干ばつが起きていたとされています。ところが1960年代以降、南東部では人口が2倍に増え水の需要も3倍以上にはね上がったにもかかわらず、定期的に発生する干ばつを計算に入れた対策が実施されていませんでした。そのため2007年に発生した干ばつでは穀物収穫が13億ドルも減収となったほか、南東部2州の60万エイカーが山火事で焼失してしまったのです。同地域では、地球温暖化の影響で気候がこれまでにも増して不安定になり、深刻な干ばつや豪雨が増加することが予想されます。その結果、海面水位の上昇で、海水が地下水に侵入する恐れもあります。さらに、南西部では生物の多様性が脅かされており、同地域にのみ原生する淡水種の魚類、貝類、両生類の多くがすでに絶滅の危機にさらされています。

nwf_southeast_drought03.jpg番組では、これらの問題に対応するための水供給対策も提案。既存の水関連施設の有効活用と水資源の効率的利用により、水供給システムの信頼性と災害時の事故の回復力を高めることや、地域社会や農・工業用の水需要に対応するための包括的な取り組み、さらに洪水管理や省エネ、水資源・魚類・野生動物の保護の必要性を訴えています。

今日(こんにち)、地球温暖化が引き起こすさまざまな問題が指摘される中、私たちの日常生活において最も身近な問題である「水」への影響全般について警鐘を鳴らす内容となっています。水供給の問題が米国南東部だけの問題ではなく、地球全体の問題であることを改めて感じさせる番組でした。
執筆:里見文乃

[関連サイト]
●この番組を制作した全米野生生物保護連盟のウェブサイト(英語)の一部。地球温暖化が引き起こされた」異常気象が、どのように水不足やハリケーンの発生数増加に関与し、野生動物を危機的な状況をもたらしているかについて、気象学者アマンダ・シュタウト博士がまとめた研究結果が掲載されています。
http://www.nwf.org/extremeweather/index.cfm