風力発電を検証する

有力な再生可能エネルギーのひとつとして注目を集めている風力エネルギー。たしかに、火力発電など、化石燃料が必要な発電方法に比べれば、環境への負荷は大幅に軽減できますが、騒音やヒトの健康への影響、景観、野生生物など、考慮すべき課題があるのも事実です。デンマークの風力発電機メーカー・ヴェスタス(Vestas)社は、科学的見地から、これらの課題を論ずるためのヒントをまとめた、動画「Wind Turbine Issues」を製作しました。

 

風力タービンが発生する音には、一定の制限が設けられているのが、一般的です。この動画では、絶対的な制限値を設定するよりも、風力タービンの設置場所ごとに、暗騒音との相対的な基準で制限値を設定すべきだと主張。実際、ヴェスタス社の最新型風力タービンV112には、異なる環境要件に柔軟に適応できるよう、複数のサウンドモードが搭載されています。また、風力タービンによる低周波音や超低周波音がヒトの健康に与える影響を懸念する声もありますが、多くの研究では、これらの音とヒトの健康との因果関係は認められていないそうです。

 

一方、風力発電所が景観に与える影響はゼロではありません。この影響を最小化するためには、ソフトウェアなどを用いて、「風力タービンを設置すると、景観がどのように変化するのか?」を事前にシミュレーションすることが有効です。また、鳥やコウモリをはじめとする野生生物への影響も同様。これらの生物の個体数や飛行パターン、習性について詳しく調査し、「風力タービンを、どの場所に、どのように配置すれば、野生生物への影響を小さくできるか?」を慎重に検討する必要があるでしょう。

 

風力エネルギーの導入を考えるにあたっては、可能な限り、事実を集め、これに基づいて、メリット・デメリットを比較し、総合的に判断することが不可欠です。「Wind Turbine Issues」をご覧いただき、客観的な視点から、風力エネルギーにおける課題を、改めて考えてみましょう。

 

執筆:松岡由希子

 

[関連サイト]

Vestas社の公式ブログ(英語)
デンマークの風力発電機メーカー「Vestas」社による、風力エネルギーについて、広く一般に理解してもらうためのコンテンツが紹介されています。
http://www.vestas.com/en/about-vestas/strategy/political-affairs/green-energy-race/public-acceptance.aspx?utm_source=greentv&utm_medium=greentv&utm_campaign=greentv